そうだ。
望みはまだある、けど。
ツッコミを入れる私に、
俊は少しイタズラっぽく笑ってみせる。
……いいなぁ、余裕そう。
私も、もっと頑張らなきゃ。
亜莉朱ちゃんの言葉に、
頭の上でハテナを浮かべる。
驚きのあまり声が出る。
そっか、
二人は幼なじみだったんだ。
だからどうりで……
でもすぐに『良くない!』なんて、
声をハモらせる二人だけど。
こういうの仲いいって証拠じゃないかな。
一時期は幼馴染いいなぁ、
ってよく憧れてた。
昔から一緒っていうのは、
なんだか温かいイメージがあって。
でも良かったかも。
俊と佐々木くんがこうして仲良くなれて。
好かれてる俊なのに特定の友達を作らないから、
実は心の底で心配しちゃってたんだよね。
それでもこりずに、俊のガードに入っていけるような佐々木くんはすごくありがたい存在だ。
あんなに誰かと楽しそうに笑い合う俊は、
初めて見たもん。
*
二人と校門のとこで別れたあと、
俊のとなりに並んで駅まで一緒に歩く。
なぜか、俊の口から“亜莉朱ちゃん”の名前が出る。
ただ名前が出るだけなのに、
心はモヤっとしてしまった。
……でもダメダメ。
優しくしてくれる亜莉朱ちゃんを
悪いように思っちゃ。
別に心配することは何にもないもんね。
優しく微笑まれる。
もしかして……
私のこと心配してくれてるの??
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!