学校から外に出ると、さわやかな風が吹いて
俊のストレートな髪をゆらゆらと揺らした。
あぁ、風に吹かれる俊も最高にカッコイイ。
まるでドラマのシーンみたい、なんて。
ダメダメっ。
思わず見とれちゃうなんて。
あわてて、オレンジ色の空に
視線を変えた。
そしてしばらくしてから
地面に視線を落とせば、
俊の影と私の影が二つならんでいる。
ふふ、なんだかこういうの嬉しいな。
二人で歩いていると、突然立ち止まる俊。
どうしたんだろう、急に。
俊が指差す方を見てみると、
いつも通学路の道に座っている
野良猫さんが目に入って、
近くまでかけ寄る。
シロちゃんは、真っ白なふわふわした
毛並みがとってもキレイで。
大きなおめめは、淡いブルーなんだ。
少し困ったような表情を見せながら、
しゃがみ込む俊に、シロちゃんは
甘えたようにニャーォと鳴く。
ちなみにシロちゃんは、
私たちが勝手につけた名前なの。
全身が真っ白だから“シロちゃん”って。
ニャーニャーと鳴きながら、
俊の制服のポケットに近づいて、
スリスリしはじめるシロちゃん。
きっとそこには、
パンがひそんでいるみたいです。
パンを夢中で食べているシロちゃんの
頭をそっとなでてあげると、
気持ち良さそうに目を細めた。
ふふ、可愛い。
そうだ。いつかはシロちゃんも、
誰かに拾われたりするのかな。
こんなにキレイな毛並みで近づかれたら、
思わず抱きしめたくなっちゃうのが当たり前。
ニャー。そう鳴くと、
狭い路地裏に去っていったシロちゃん。
すっかり姿が見えなくなっちゃった。
オレンジの夕焼けにつつまれながら、
声に出して笑い合う私たち。
この時間は、二人だけの特別な時間です。
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。