翌日。
朝から空はうす暗い灰色で、
雲と雲が重なり合って、
今にも雨が降りそうだ。
そういえば、天気予報でも
雨が降るって言ってたっけ。
でもスクールバックのなかには、
折りたたみ傘も入れたし大丈夫かな。
いつもの駅に小走りで向かえば、
ベンチに見覚えのある後ろ姿を見つけて、
ドキドキと胸が高鳴る。
間違いない、
あの少し立っている寝ぐせ具合。
さり気ない俊の優しさに、
胸がきゅんと甘く締めつけられる。
そう言って、となりに座るよう、
俊はベンチをぽんぽんとたたいた。
怪しむような鋭い目を向けられる。
いつの間にか、チェックを始めていた俊。
昨日何も言わないで、コンビニに行ったから、
それでずっと行き先が気になってたのかな。
どうしてもシロちゃんのエサを、
サプライズで見せたかったの。
不安にさせてごめんね、俊……。
*
電車から降りたあと、
いつもの通学路を
俊と並んで歩いていく。
すると、俊がふと立ち止まって
何やら遠くのほうを指さす。
見ると、シロちゃんが
ちょこんと座っている。
外は小雨になってきたのに、
それでも濡れたまま
待っているようだった。
しゃがんで、シロちゃんの頭や体を
ハンカチで拭いてあげる。
スクールバッグから
紺の折りたたみを取り出して、
シロちゃんの近くに差して上げた。
2本入れてて良かった。
缶詰のフタを開けて、
シロちゃんのそばに
そっと置いてあげる。
すると、シロちゃんは
興味津々な様子で顔を近づけ、
まずは匂いを確認する。
そして気に入ったのか、
バクバクと食べ始めた。
俊が申し訳なさそうな顔で謝る。
行く先も教えずに別れたら、
心配するのも無理ないもんね。
編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。