翌日。
駅のホームで、電車が来るのを待つ。
近くのベンチに腰をかけると、
スクールバックから
ウォークマンを取り出して、
両耳にイヤホンをつける。
朝はシロちゃんいるかなー??
次の駅を降りて少し歩いた道のとこで、
よく休んでたりするんだよね。
曲を再生させながら、
そんなことを考えていると。
さっきまでイヤホンを
どっちの耳にも入れていたはずなのに。
ふいに右側から大好きな甘い声が聞こえて、
ばっと顔を上げれば
私のイヤホンを自分の片耳につけながら、
微笑む俊が立っていた。
少しあきれた表情を見せながらも、
俊はとなりに座った。
距離が近いせいか、
ふわふわと香る柔軟剤。
俊らしい、さわやかな香りがする。
始めるというのは、私への“チェック”。
嫉妬深い俊は、これを朝から
かかかさずやっている。
たしかに昨日は、
返事をすぐに返せずにいた。
でも、それは。次のテストに向けての
復習をしてたからなんです!!
たまたま図書員の人がサボってたから、
昨日は黒瀬くんと私だけになっただけで。
仕事以外のことは何もしてないよ……!?
終了って言葉で言っている割には、
すごく表情がフキゲンそうで、
怒っている感じ……ですがっ!?
絶対、解決してないよね!?
す、スルー……??
えっと、完全に無視されてる感じ
ですよね……。
下から覗いてみても
軽く鼻をつままれた。
でもでも、ほっぺたは
リンゴみたいに真っ赤になってて
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。