花火大会かぁー。
もう少しで夏の季節だもんね。
早いなぁ!!
後ろを見ると、同じプリントをじーっと興味深々に見つめている俊の姿。
もしかして興味あるのかな??
なんて。
たしか昨日は、屋上で一緒にお弁当を食べたんだっけ。
ちょうどお弁当も持ってきてないしね。
その嬉しそうな笑顔。
こっちまで嬉しくなっちゃうよ。
聞いたとたんにクラスは、
『えぇー…』と一斉に声をハモらせる。
私も嫌だなぁ……。
先生に呼ばれて、イスから立ち上がる。
うぅー……。
悪い点数じゃないといいなぁ。
やっぱりダメ……でした。
ハァ……。
テストをファイルにすぐ入れて、
机に倒れこむように伏せた。
どうしようー……。
絶対にお母さんにお説教されちゃう。
なんて落ち込んでいると。
覗き込むように心配そうな顔するから!!
もう、心臓がドキドキしちゃうよ……。
やっぱり俊って優しいなぁ。
私の変化にすぐ気づいてくれる。
頭の上にハテナを浮かべていると。
俊は自分の机からテストを手に取って、
私の机に置いてくれた。
えっ……!!
ちょ、ちょっと待って!?
何で!?
そんな冷静なのっ!?
“100点”だよ~っ!?
嘘、でしょ……。
私の驚いてる顔に、俊が逆に驚いた表情をする。
あ、当たり前……。
でもっ。
私にはサッパリ100点なんて無理。
高校に入って出したことないかもしれない~……。
いや、出すことの方が難しいよ。
でもちょっと恥ずかしい。
頭悪い彼女なんて……うぅ。
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。