ぺけたんside
朝起きると僕はベッドの上にいた
たしかマサイくんがお風呂に入るって言って待ってる間に家の中うろうろしてたら寝ちゃったんだ
そういえばこの家このダブルベッドしかないけどなんでだろ?
そんなことを考えているとチクワがやってきた
撫でてあげると嬉しそうに尻尾を振る
僕はチクワを抱えてリビングに行くとマサイくんがソファで寝ていた
まさか僕の気を使ってここで寝たの!?
僕はマサイくんが起きないように足音を忍ばせてキッチンに行く
お詫びに朝ごはんを作ってあげよう
和食でいいかな?
ご飯と豚汁と卵焼きと鮭の塩焼きにしよう!
豚汁を作るためにお肉や野菜を切っていく
事故に遭う前、僕ってこの家でどんなことしてたんだろう
そもそも僕って料理できたのかな?
恋人とかいたのかな?
そういえば僕はなんで事故にあったんだろう?
ぼぅっと色んなことを考えたせいで指を切ってしまった
リビングにいるマサイくんの方を見るとまだ寝ていてほっとする
僕は近くにあった救急箱から絆創膏をとって指に貼り、そのまま黙々と朝食を作り続けた
モトキside
シルクに昨日のことを謝るために家の前まで来た
思い切り深呼吸をしてドアノブに手をかけるとLINEの着信音が鳴った
相手は家の主、シルクからだった
そこにはこうメッセージに書かれていた
俺はそれを見て足早に駅に向かって歩いた
今まではどんなに忙しくなってもシルクは俺との時間を作ってくれていた
そうしてくれなくなるということは距離をとられたも同然だ
原因はきっと昨日の俺の態度だろう
俺、ほんとバカだなぁ
ぱらぱらと雨が降る中、駅の改札口を通った
シルクside
モトキにLINEを送って溜息をつく
俺はモトキの嫌がることはしたくない
そうしないために俺の気持ちを切り替えるための時間が必要だ
ごめんなモトキ、寂しいと思うがお互いのためだから我慢して欲しい
そう思いながら俺は編集作業を再開した
ぺけたんside
朝ごはんを作り終えて、マサイくんを起こそうと思う
マサイくんがゆっくりと体を起こす
ふとマサイくんの手を見ると、薬指に指輪がついていた
マサイくん、結婚してたんだ
マサイくんは僕を見て少し笑った
でもその目はなんだか悲しそうで。。。
マサイくんがリビングからいなくなる
すると不意に涙が一筋溢れた
1人になった空間でそう呟いた
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編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!