第19話

<番外編>僕が好きになった時
5,806
2020/06/13 11:00
サァァ…

桜の花びらが舞う。

高校に入ってまだ日が浅い四月。

僕はまだ一人だった。
クラスの男子
時透、すごい花びら
時透無一郎
時透無一郎
これ?
川向こうに桜並木があって、
昼休み行ってきた

気持ちよくてちょっと寝ちゃった
クラスの男子
俺らも誘ってくれたらいいのにぃ
クラスの女子
ねー(*^_^*)
クラスでお花見とかしたいねー
時透無一郎
時透無一郎
うん…そうだね
***

理科室。

ザー
僕はビーカーを洗っていた。
有沢(なまえ)
有沢あなた
時透くん、
わたしが今日、片付け当番なのよ
いいのに(*^_^*)
時透無一郎
時透無一郎
うん(*^_^*)
じゃあ棚に並べる方お願い
有沢(なまえ)
有沢あなた
そう?ありがと(*^_^*)
彼女は、有沢あなたさん。

受験の時、僕に鉛筆を貸して
励ましてくれた優しい人。

あれから実はずっと気になってる。
僕と一緒に、A組のクラス委員になった。
***
時透無一郎
時透無一郎
有沢さん、それ
今朝の委員会のプリントでしょ?
半分ちょうだい
有沢(なまえ)
有沢あなた
え…でもやっちゃったし
時透無一郎
時透無一郎
これ全部!?
一人で!?
有沢(なまえ)
有沢あなた
うん(*^_^*)
時透無一郎
時透無一郎
今朝僕、
部活で出られなかったのに…
ありがとう
有沢(なまえ)
有沢あなた
わたしこそ(*^_^*)
片付け、手伝っもらって
どうもありがとう
時透無一郎
時透無一郎
うん…
***
時透無一郎
時透無一郎
有沢さんってすごいよね
感じいいし、およそ欠点ていうものが
見つからない

世の中には、あんな人もいるんだなー
クラスの男子
あァ?
それまんま、自分のことだろ時透
時透無一郎
時透無一郎
え…
クラスの男子
女子なんかもー
みんな時透ねらいだし

告白とかされたのかよー
こんちくしょー
時透無一郎
時透無一郎
いや…/////
クラスの男子
ホントならマジでむかつくけど
時透はなんか憎めないよな
クラスの男子
同性の目から見ても、
やなとこないってすごい

僕のまわりには、
穏やかな空気が流れていた。

でも…
時々、自分の中から声がした。


「おまえ、本当に楽しいのかよ」

って。



***
他クラスの人
あの…
時透くん、つきあってる人いますか?
時透無一郎
時透無一郎
ごめん…
他クラスの人
好きな人いる?
この子、時透くんが好きで…
時透無一郎
時透無一郎
ごめんね…

女の子に告白されても、
まるで心が動かなかった。

友達に囲まれて笑っていても、
何も感じない自分が怖かった。


いつも…
僕は一人なんじゃないのか。
***
有沢さんと僕は、
委員会のプリントを放課後やっていた。
時透無一郎
時透無一郎
有沢さんは、
この高校一本だったの?
有沢(なまえ)
有沢あなた
うん
時透無一郎
時透無一郎
すごいね…
有沢(なまえ)
有沢あなた
うちはね、そんなに裕福じゃないから
勉強にお金はかけないって決めてるの

その中で最大限の勉強を
しようと思ってるのよ(*^_^*)
時透無一郎
時透無一郎
大人だね…
有沢(なまえ)
有沢あなた
勉強をするときに、
そういう目的があると、意欲がわくわ

目標があると、
勉強はとてもおもしろいの(*^_^*)
有沢(なまえ)
有沢あなた
時透くんは?
時透無一郎
時透無一郎
うん…僕も…

だいたい同じ理由…かな

衝撃を受けた。


僕の隣にいる女の子は、
ピンと背筋を伸ばし、
迷いのない目をしていること。

自分の生き方を、
はっきり持っている人だってこと。


彼女を知りたい…!

何を考えるのか。
彼女にも迷いや不安があるのか。
孤独を感じることがあるのか。


もっと…。


***

カタン

時透無一郎
時透無一郎
昇降口に手紙?

「放課後、桜並木のとこで…」

はあ…なんて断ろう…
桜並木…。
サアア…

花びらが舞う。
有沢(なまえ)
有沢あなた
あら時透くん(*^_^*)
時透無一郎
時透無一郎
えっ…!!??
有沢さん!?

有沢さんが僕を…/////

嬉しいっっ!!!
時透無一郎
時透無一郎
あのっ…////
他クラスの人
あのう…時透くん
時透無一郎
時透無一郎
えっ!?
有沢(なまえ)
有沢あなた
あ、待ち合わせしてたのね
ごめんなさい、桜を見ていたの

じゃあね(*^_^*)
か…勘違い!?
僕の勘違いだった。
時透無一郎
時透無一郎
はははっ(*^_^*)

あはははは…!!
他クラスの人
時透くん?

その時、彼女を…
有沢あなたを好きだって
気づいたんだ。

時透無一郎
時透無一郎
彼女をつかまえたい

あのまっすぐな目をした女の子を
気持ちがあふれてきて、
こんなにはっきりと何かを望むのは
初めてだった。


僕は恋をしたんだ。
***

その後、予想外の彼女の本質に出会い、
僕も予想外な道をたどることになるのだが…。

まあ人生ってそんなもんだし
後悔なんてしてないね。


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