~あなたサイド~
暑い6月だった。
初デートが失敗に終わり、
時透くんとデートをしまくった。
時透くんといるのは楽しい。
こうして外で会っていると、
改めて気づく。
ー時透くんは、美しいー
顔なんか女の子よりきれいだし。
頭がよくて、運動神経よくて、
何をやってもさまになるし、
一緒にいてくれるし、
優しくしてくれるし、
浮気の心配もなさそーだ!
でもまだ…
完璧に磨きあげられた器の中に
何を考え、どう感じ、
どんな心を抱えているのか…。
知りたいのはそういうこと。
いつも見ていたい。
何を考えているか、
いつかわたしにも、わかるようになるかな…。
~時透くんサイド~
初デートが失敗に終わったあと、
僕たちはデートをしまくった。
男としてふがいなく、
なかば意地になっていた。
あなたといるのは楽しい。
こうして外で会っていると、
改めて気づく。
ーあなたは“おもしろい”ー
僕は、この人の思考回路は、
生涯読めないと思う。
しかしおもしろい人を好きになったもんだ。
私利私欲の人だし、
根性は汚いし、
思考回路は突き抜けている。
感情的で怒るとこわいし、
時おり、自分がヘンだと
真剣に苦悩しているのもおもしろい。
僕は、あなたに
コンプレックスを持っている。
成績は同じなのに、
あなたは個性があってずるい。
僕はとことん無個性で、
枠にはまった人間だ。
“完璧”であれば、
幸せになれると思ったのに…。
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僕たちは、これからだ…。
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!