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ここにいる人なら誰でも知っていること。
今から107年前、私達以外の人類はみんな巨人に食い尽くされてしまった。
その後、私達の先祖は巨人の超えられない強固な「壁」を築くことによって巨人の存在しない安全な領域を確保することに成功し、私達はその存在を忘れるほどの平和な生活を送っていた。
今まで、50メートルもあるこの壁を超える巨人など現れなかった。
でもいまそれは覆された。
つまり……
ゴゴゴゴゴ
ドゴオオオオオオ
耳を割くような音に耳を塞ぐ。
私は目の前の光景に目を疑った。
飛び回る無数の岩石。
それが家屋、建造物を破壊し、瓦礫が散る。
そして何より1番の衝撃は……
みんなが悲鳴をあげ、次々奥へと逃げる。
逃げようとして、あることを思い出す。
私はみんなの流れを押し切ってうちへと今までにないスピードで走る。
走ってる途中で破片に上半身が潰された人に群がる女の人と子供を見かけた。
まるで呪文のように大丈夫を繰り返し、家までの最後のまがり角が見えた。
早く私の背も越してしまいそうなテトカとフィルに会いたい…!
またお買い物するって約束したリアとエルルに会いたい………!!
いつも笑顔なお母さんに会いたいッ!!!!
私はまがり角を曲がった。
私は倒れそうになった。
潰れた私の家。大好きな家。
私は泣き叫ぶ。
ドンッッッッッッッッ!!!!!
さっきよりかは小さいがまたもや地響きがなった。
100m程先に、周りの家よりも大きな巨人が見えた。
きっと穴から入ってきたに違いない。
私を独りにしないで………。
また抱きつかせてよ………!
やつはこちらへゆっくりと向かう。
私の前で止まった。
そして腕を伸ばす。
目を瞑って、死を待っていたら突然風を斬る音が聞こえた。
ザシュッッッッッ
次は何かを切る音。
襲ってこない、なぜだろうと思い、目を開ける。
そこには……
両手に剣をもち、緑色の翼が描かれたマントを羽織った男の人が横たわる巨人の上に立っていた。
剣についた巨人の血を払う。
上に乗った男の人が私に言った。
なんでこんなに偉そうなんだろうと思いつつも考える気力もないので、淡々と答える。
やっぱり淡々なんて無理だった。
家族のことを思い出そうとすると涙があふれる。
男の人は黙ってしまった。
そりゃそうだよね。知らない人の家族なんて興味ないよね。
…でも、なんで助けてくれたのかな…
このままさまよい歩いて巨人に食べられよう。
そして、みんなのもとに行くんだ、、、。
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!