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『 でっかいなぁー 、、、(ボソッ)』
裏口の方に回ってきたけど
表から見たら意外とデカイ松竹座 。
普通にキャパ数あるくね 。すごいなあ 。
… ってこれ普通に入っちゃっていいの?
どうしよう 、警備員さんいるけど … 。
『 っあの 、!』
警備員「 はい?… あ 、桜木さんですか?」
『 あっ 、はい 』
警備員「 あっ 、本物 … あ 、いや 、大変
失礼いたしました 。何か御用でしょうか?」
『 あ 、大西くんに誘われて来たんですけど …
中 、とか入れませんかね 、やっぱり 』
警備員「 そうですね … 。
やはり女優さんだろうと 、
許可証かご本人様と一緒でなければ … 」
『 そうですよね … 今少し連絡してみます 』
警備員「 はい 」
スマホを取り出して大西くんの連絡先を
探していると前の方から「 … あなた?」と
いうどこかで聞いたことのあるような声がした 。
パッと顔を上げると 、目の先には
かつて5.6回は経験して私の裏も表も知っている
顔が特徴的な … 藤原丈一郎が
ペットボトルを持ってこちらを見つめていた 。
『 … 丈くん 、』
警備員「 藤原さんとお知り合いですか?
ならば藤原さんが許可していただければ
お通し出来るのですが 」
『 … 丈くん!
ここ通っていいよって言って!』
藤原「 ?よう分からんけど俺のツレやし
警備員さん許可したってくださいー 」
警備員「 分かりました 。どうぞ 」
『 すいません 、ありがとうございます 』
警備員さんに通してもらって駆け足で
丈くんの元へ行く 。丈くんはとある人を
通じて知り合ったんだけど去年あたりから
パタリとお店に来なくなったから少し寂しかった 。
結構上手くてお気に入りだったのに 。
『 ありがと丈くんっ 、久し振り 』
藤原「 ほんまひさしぶりやん 。
… 相変わらず身長は伸びひんのな 笑 」
『 なっ 、これでも2cm伸びたから!』
藤原「 たった2cmやろ?
足して162はちっさいて 笑
あなた確か今年20ちゃうん?」
『 もう20だよー 。まだJKだけどね 』
藤原「 おまっ 、また去年も
卒業出来ひんかったん?!笑 」
『 しっ 、!うるさい丈くん 』
藤原「 … お前さぁー 、まだやってん?」
『 丈くんには関係ないですよーう 』
藤原「 … 移ってるやん 、口癖 」
『 、、、別に?今の口癖じゃないし 』
藤原「 ふーん 。ま 、別にええけど 」
『 … 丈くんのそういうところきらい 』
藤原「 … お前うるさい 」
『 ちょ 、丈くっ 、』
いきなり手を引っ張られて物陰に隠れたと
思ったら唇を塞がれた 。ふんわり香る丈くんの
柔軟剤の匂いが懐かしい 。そして少し変わった
香水が私をどんどん泥酔いにさせていく 。
『 んぅっ 、じょぉっ 、』
藤原「 っはぁ 、」
ただひたすらキスしかしないこの男 。
丈くんにとって触れるだけのキスは挨拶 。
舌を入れてくるのは求めてるものと同然 。
求めてくれているなら他のも触って欲しいし
触りたいのに丈くんはそれを拒む 。
私と丈くんとの間に 、銀色の薄い糸が伸びた 。
編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。