第20話

( XX )
176
2020/12/24 09:48
黒尾さんと復縁して1週間。
階段から落ちた時の怪我も少しずつ治ってきた。

今日は、東京都代表決定戦。
そして、私の17歳の誕生日。

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黒尾 鉄朗
黒尾 鉄朗
七海
朝倉 七海
朝倉 七海
ん?
黒尾 鉄朗
黒尾 鉄朗
決めてくるから、春高
彼はそう言って体育館に向かった。
彼の背中はいつもより頼もしく見えた。
夜久 衛輔
夜久 衛輔
…頼もしいな
朝倉 七海
朝倉 七海
衛輔くん
夜久 衛輔
夜久 衛輔
絶対連れてくから
彼の笑顔で私も笑顔になれる。
彼の手は前よりも大きく感じた。
彼の後ろ姿も逞しく見えた。





私も薫たちと合流して
ギャラリーに向かった。

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東京都代表決定戦、第1試合
音駒 - 梟谷学園















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全国5本指のエースに入る
木兎光太郎(ぼくと こうたろう)を有する
都内屈指の強豪校 _________













黒尾 鉄朗
黒尾 鉄朗
俺たちは血液だ _________
黒尾くんが言っているこの言葉、
とってもかっこいいな、と思う。











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俺たちは血液だ
滞りなく流れろ
酸素を回せ
脳が正常に働くために…
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守りの音駒のキャプテンとして
試合している彼を見て
誇らしくなった。


(私、この人の彼女なんだ…)







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試合は 0-2 で負けてしまったが、
ここで終わりではない。
ここからが本番。




そんな上手くいくと思っていないと
彼も言っていた。



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東京都代表決定戦 3位決定戦
東京都の3枠の一番最後に残るのは
音駒か _________
戸美学園か _________










勝負の大一番だった。
間宮 薫
間宮 薫
緊張、してきた…
朝倉 七海
朝倉 七海
私たちが信じないと…
佐々木 遙
佐々木 遙
そう、だな…
少し不安になった。
これで負けたら音駒は
春高の切符を掴めない。


やっとここまできたのに…!
ここまで来れたのに!!!!










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山下 琳華
山下 琳華
なに不安な顔してるの!
聞こえたのは琳華さんの声だった。
朝倉 七海
朝倉 七海
…え
山下 琳華
山下 琳華
七海ちゃん!しっかりしなさい!
朝倉 七海
朝倉 七海
…っは、はい!
山下 琳華
山下 琳華
鉄朗の彼女が
彼らを信じなくてどうするの!
朝倉 七海
朝倉 七海
…すみません
山下 琳華
山下 琳華
大丈夫、勝つよ、絶対。
琳華さんは
ここにいる誰よりも彼らが勝つと信じていた。
負けないと、必ず春高に行くと信じていた。
試合は接戦だった。
3位決定戦に相応しい試合だった。

彼らを見ていると、少しザワついていた。
仲村 聖
仲村 聖
どう、したんだろ?
山下 琳華
山下 琳華
…まさか…
衛輔くんの様子がおかしい
朝倉 七海
朝倉 七海
…衛輔くん!!!!!!
足を引きずりながら
ベンチに戻る彼。

ボールを取りに行った時に
ギャラリーの足を踏んでしまったらしい。
朝倉 七海
朝倉 七海
衛輔くん!!!
山下 琳華
山下 琳華
…七海ちゃん、落ち着いて!
朝倉 七海
朝倉 七海
でも、衛輔くんが…っ!
山下 琳華
山下 琳華
軽い捻挫だと思う。
1.2週間あれば完治すると思う。
朝倉 七海
朝倉 七海
…でも…っ
山下 琳華
山下 琳華
悔しいのは彼自身よ!
衛輔が抜けただけで
崩れるようなチームじゃない!
琳華さんはちゃんと彼らを見ていた。
音駒というチームがどんなチームか
ちゃんと分かっていた。私よりも。
朝倉 七海
朝倉 七海
…彼らを信じます…
山下 琳華
山下 琳華
うん、大丈夫だよみんなは
朝倉 七海
朝倉 七海
はい
琳華さんの言葉を信じて
試合を見る。

(お願い…っ、勝って……)












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黒尾くんも途中で爪が割れて
一旦ベンチに下がった。
朝倉 七海
朝倉 七海
…!黒尾、くん…!
ベンチに戻ってきた彼は
不安そうな顔をしている私に気付いて
「大丈夫」と言ってくれた。


衛輔くんが抜け、
さらに、黒尾くんまで抜けた音駒。

それでも彼らの守備はかたいまま。















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守りの音駒ってチョーかっこいい…
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試合は 2-0 で勝利し、
無事に春高への切符を掴んだ。
朝倉 七海
朝倉 七海
良かった…っ
間宮 薫
間宮 薫
良かったね!!
山下 琳華
山下 琳華
七海ちゃん
朝倉 七海
朝倉 七海
…琳華さん!!
琳華さんが私にこうやって話しかけるとは思ってなかった。

未だに忘れられない。
琳華さんのあの言葉。
多分、私より長く深く彼を愛していた。











何を言われるのだろう。
正直、怖かった ______
山下 琳華
山下 琳華
鉄朗と衛輔をよろしくね
彼女はそう言って帰っていった。
朝倉 七海
朝倉 七海
あ、ちょ…
夜久 衛輔
夜久 衛輔
七海?
琳華さんを追いかけようとしたら
後ろから衛輔くんの声が聞こえた
朝倉 七海
朝倉 七海
…っ衛輔、くん!!!!
夜久 衛輔
夜久 衛輔
どうしたんだよ〜
私が泣きそうな顔をしているのを見て
彼は笑いながら心配してくれた。
朝倉 七海
朝倉 七海
足…、足…大丈夫…?
夜久 衛輔
夜久 衛輔
なんてことねえよ
こんなのすぐ治る
朝倉 七海
朝倉 七海
…よかったっ、よかったあ…
夜久 衛輔
夜久 衛輔
応援、ありがとうな
彼は私の頭を撫でてくれた。
夜久 衛輔
夜久 衛輔
もうすぐ黒尾来るから一緒に帰りな
朝倉 七海
朝倉 七海
え?
夜久 衛輔
夜久 衛輔
俺、今から病院行くから
朝倉 七海
朝倉 七海
私も、ついて行く…!
夜久 衛輔
夜久 衛輔
ダメだ、今日は黒尾と帰れ
朝倉 七海
朝倉 七海
……わかった
夜久 衛輔
夜久 衛輔
七海
朝倉 七海
朝倉 七海
ん?
夜久 衛輔
夜久 衛輔
17歳の誕生日おめでとう
彼は笑顔でそう言って、車に乗った。
彼の笑顔は忘れられないくらい眩しかった。

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