黒尾さんと復縁して1週間。
階段から落ちた時の怪我も少しずつ治ってきた。
今日は、東京都代表決定戦。
そして、私の17歳の誕生日。
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彼はそう言って体育館に向かった。
彼の背中はいつもより頼もしく見えた。
彼の笑顔で私も笑顔になれる。
彼の手は前よりも大きく感じた。
彼の後ろ姿も逞しく見えた。
私も薫たちと合流して
ギャラリーに向かった。
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東京都代表決定戦、第1試合
音駒 - 梟谷学園
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全国5本指のエースに入る
木兎光太郎(ぼくと こうたろう)を有する
都内屈指の強豪校 _________
黒尾くんが言っているこの言葉、
とってもかっこいいな、と思う。
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俺たちは血液だ
滞りなく流れろ
酸素を回せ
脳が正常に働くために…
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守りの音駒のキャプテンとして
試合している彼を見て
誇らしくなった。
(私、この人の彼女なんだ…)
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試合は 0-2 で負けてしまったが、
ここで終わりではない。
ここからが本番。
そんな上手くいくと思っていないと
彼も言っていた。
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東京都代表決定戦 3位決定戦
東京都の3枠の一番最後に残るのは
音駒か _________
戸美学園か _________
勝負の大一番だった。
少し不安になった。
これで負けたら音駒は
春高の切符を掴めない。
やっとここまできたのに…!
ここまで来れたのに!!!!
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聞こえたのは琳華さんの声だった。
琳華さんは
ここにいる誰よりも彼らが勝つと信じていた。
負けないと、必ず春高に行くと信じていた。
試合は接戦だった。
3位決定戦に相応しい試合だった。
彼らを見ていると、少しザワついていた。
衛輔くんの様子がおかしい
足を引きずりながら
ベンチに戻る彼。
ボールを取りに行った時に
ギャラリーの足を踏んでしまったらしい。
琳華さんはちゃんと彼らを見ていた。
音駒というチームがどんなチームか
ちゃんと分かっていた。私よりも。
琳華さんの言葉を信じて
試合を見る。
(お願い…っ、勝って……)
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黒尾くんも途中で爪が割れて
一旦ベンチに下がった。
ベンチに戻ってきた彼は
不安そうな顔をしている私に気付いて
「大丈夫」と言ってくれた。
衛輔くんが抜け、
さらに、黒尾くんまで抜けた音駒。
それでも彼らの守備はかたいまま。
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守りの音駒ってチョーかっこいい…
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試合は 2-0 で勝利し、
無事に春高への切符を掴んだ。
琳華さんが私にこうやって話しかけるとは思ってなかった。
未だに忘れられない。
琳華さんのあの言葉。
多分、私より長く深く彼を愛していた。
何を言われるのだろう。
正直、怖かった ______
彼女はそう言って帰っていった。
琳華さんを追いかけようとしたら
後ろから衛輔くんの声が聞こえた
私が泣きそうな顔をしているのを見て
彼は笑いながら心配してくれた。
彼は私の頭を撫でてくれた。
彼は笑顔でそう言って、車に乗った。
彼の笑顔は忘れられないくらい眩しかった。
編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。