黒尾先輩は好きな子がいる、と言った。
私の恋はまた叶わない
誰にも敵わないんだろう、きっと。
私、初恋だったのに…
そう思うと、涙が止まらなかった。
どう頑張っても
私は彼の隣にはいれない
彼の傍で支えることはできない。
そう、思った。
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あの日、というのはきっと、
琳華さんの元へ駆けつけた日。
そしてその、ある女の子、は私のことだろう。
少しだけ間があった。
嫌な間だ。
私の名前を出されて
黒尾先輩はきっと困っている。
好きでもない相手の名前を出されて、きっと…
彼の口から言われたその言葉を
私は最初信じられなかった。
(…え、いまなんて…?)
彼女はそう言って
階段の方に走っていった。
私は玄関の方に急いで走った。
このままだったらきっと黒尾先輩にあってしまう。
泣いているところを見られてしまう。
諦めるって決めたんだ。
好きにならないって、決めたのに。
黒尾先輩の声が後ろから聞こえた。
黒尾先輩が私の手を掴んだ
黒尾先輩の顔を見れない
諦めるって決めたのに
彼への気持ちが溢れてしまう。
(好き。好きだよ…先輩…っ)
彼は私の前に来た。
顔が見えないように俯いた。
優しい彼の声が聞こえる。
その声に、その優しさに涙が止まらない。
彼は優しく抱きしめてくれた。
気が済むまで泣けば良いよと言ったくれた。
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私が泣き止むと彼は頭を撫でてくれた。
落ち着いてよく考えると
私はまだ黒尾先輩に抱きしめられたままだった。
顔が熱くなるのがわかる。
彼から離れようとしても
さらに強く抱きしめられて
離れることができなかった。
彼は私の顔を見ながらそう言った。
思ってるよりも顔が近くて
ドキドキした。
(先輩の顔、めっちゃ整ってる…かっこいい…)
私はそう言って彼から離れて
急いで玄関に行った。
彼のその声を無視して
私は校門まで走った。
そう言って私の前に来た彼。
困ったように笑いながら
「家まで送るよ」と言ってくれた。
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急にそんなことを言い出した彼の話を
私は頷きながら聞くことしかできなかった。
彼はそう言って笑っていた
真剣な面持ちでそう言った彼から誠意を感じた。
彼はニコッと頷いて私の手を握った
少しずつ声が小さくなる。
恥ずかしい、こんなこと普段は言わないのに。
ちゃんと聞き取ってくれた黒尾先輩は
私をある場所に連れて行ってくれた。
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。