第14話

( XIV )
179
2020/12/15 14:57
あれから約2週間が経った。
私と黒尾くんは今までよりも距離があるように感じた。

なぜなら私が彼を避けるようになったから。

衛輔くんと研磨くんには
もう写真は撮りに行かないと伝えた。
マネージャーの聖奈ちゃんもいるし
撮ってもらえばいいと言った。
衛輔くんも研磨くんも反対していたが
もう決めたことだから、と伝えた。

それとバレー部の朝練がない日は
衛輔くんと登校することにした。
それも、黒尾くんたちと会わないように
朝は早めに来るようにした。

黒尾くんと連絡も取らないようにした。
LINEもインスタも通知が来ないようにした。
私はもともと返信が遅い人間だから
"返信遅いな"としか感じないだろうけど。

少しずつ彼から気持ちが離れていく気がした。
もう、彼への気持ちは無くそうと
自分に言い聞かせた、ある日_____

____________________

授業が終わって私はバイトに向かう途中だった。
(やばい、急がなきゃ…!!)
日直で日誌を書かないと行けなくて
学校を出発するのが少し遅くなった。

(このままじゃ電車間に合わない、どうしよ…)

電車に乗らないと出勤時間に間に合いそうになかった。
しかも今日は雨で徒歩で登校した。
(なんでこういう時に雨なの…!)

横断歩道の信号はまだ青だった。
(間に合うかな…)

点滅し始めた信号。
でもこれで渡らないと電車に乗れない
間に合わない…

(だめだ、行こう…!)
私は点滅していたが横断歩道を渡ろうとした。

その時、左側に車が見えた _________
















































(…え……)
__________ドンッ



_____________________






































…な、み…!
_______________ 七海……
誰かの声が聞こえる…
私は目を覚ました。

目を覚まして見えたのは白い天井と男の人。
夜久 衛輔
夜久 衛輔
…七海…!!
衛輔くんだった。
彼はナースコールを押した。
朝倉 七海
朝倉 七海
も、り…すけ、くん…
夜久 衛輔
夜久 衛輔
…大丈夫か…七海…っ
涙目の彼は安堵の表情をしていた。
彼と母、そして主治医の話によると
私は1週間、目を覚さなかったらしい。

ハルやひいちゃん、薫もお見舞いに来てくれていたのに、
目を覚さないまま1週間が経ったらしい。
雨の日でスリップした車とぶつかった。
それ以降の記憶がないのは
私がずっと眠っていたから。
朝倉 七海
朝倉 七海
…衛輔くん、部活は…
夜久 衛輔
夜久 衛輔
たまたまテスト期間で部活が無いんだ…
朝倉 七海
朝倉 七海
そっか…
ありがとう、来てくれて
夜久 衛輔
夜久 衛輔
いいんだよ…
はぁ…よかった…っ
彼は泣きながら笑っていた。
泣くなんて珍しい。
いつも笑っている衛輔くんの泣き顔を見たのは
中学で試合に負けた時以来だ。



















____________________

コンコン…

誰かがドアをノックしていた。
母は先生と別の部屋で話をしているので
違う人だろう、と思った。

衛輔くんが返事をして
中に入ってきたのは
衛輔くんと同じ制服を着た男子高校生2人。
孤爪 研磨
孤爪 研磨
七海…!
朝倉 七海
朝倉 七海
研磨くん!
そして、その横にいるのは
黒尾 鉄朗
黒尾 鉄朗
…な、なみ……





























































__________ 私の知らない人…
朝倉 七海
朝倉 七海
………えっ、と…
黒尾 鉄朗
黒尾 鉄朗
…七海っ!ごめん、俺…っ!
朝倉 七海
朝倉 七海
……あの…、すみません…
黒尾 鉄朗
黒尾 鉄朗
…ん?
朝倉 七海
朝倉 七海
…どちら様ですか……?
私は彼に見覚えがない。
身長の高い黒髪の男の人。

(誰、なんだろう…)
夜久 衛輔
夜久 衛輔
え、七海……
朝倉 七海
朝倉 七海
私、この人のこと知らない…
孤爪 研磨
孤爪 研磨
クロだよ?七海の彼氏の
朝倉 七海
朝倉 七海
かれ、し…?
夜久 衛輔
夜久 衛輔
嘘だろ、七海
お前まさか…
黒尾 鉄朗
黒尾 鉄朗
もういいよ夜っ久ん
夜久 衛輔
夜久 衛輔
でも
黒尾 鉄朗
黒尾 鉄朗
これ以上困らせるわけにはいかないだろ…
孤爪 研磨
孤爪 研磨
クロ…
朝倉 七海
朝倉 七海
すみません、事故の後遺症か
なんかだと思うんですけど…
黒尾 鉄朗
黒尾 鉄朗
うん、大丈夫…だよ
朝倉 七海
朝倉 七海
すみません…
彼は少し寂しそうに笑っていた。
朝倉 七海
朝倉 七海
あの…、お名前…教えてもらっても…?
黒尾 鉄朗
黒尾 鉄朗
黒尾鉄朗、だよ。
朝倉 七海
朝倉 七海
黒尾さん!覚えて、おきますね
黒尾 鉄朗
黒尾 鉄朗
ありがとう
彼の笑顔は少し儚く感じた。

プリ小説オーディオドラマ