目を覚ますと
私は保健室にいた。
体を起こそうとすると、
誰かが横で寝ているのに気づいた。
ウトウトしている彼。
私がもう一度名前を呼ぶと
ゆっくり目を開けた。
久しぶりに呼び捨てで呼ばれた。
彼は私を抱きしめた。
どういうことか聞いたら
私が死んでしまうかもしれないと思ったらしい
少し可笑しくて笑うと
彼もつられて笑っていた。
安心した、と
彼は私をもう一度抱きしめてくれた。
私がそう言うと彼は少し離れた
私の顔を見て
もう一度私を抱きしめた。
ハハっと笑う彼。
このまま聖奈ちゃんが来たら怒られちゃう…
諦めなきゃなのに。
好きでいたらダメな相手なのに。
もっともっと好きが溢れちゃう…
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彼からそう告げられ
私は少し彼から離れた
彼からそう呼ばれるだけで
涙が出そうになる。
まだ、記憶が戻ってないことを言っていないのに
私がこうやって呼ばれると嬉しいことを彼はちゃんと知っている。
唐突に告げられたその言葉は
私の中で大切にしたい想いだった。
私と同じ気持ちだった。
しっかり顔を見て笑顔でそう言ってくれた彼。
涙が止まらない。
泣かないで、と優しく涙を拭ってくれた
泣いている私の涙を拭いながら
俺も大好きだよ、と言う彼。
諦めなくて、良かった。
彼を好きでいて、良かった。
もう離さないから、と言われて
また強く抱きしめられた。
黒尾くんが、好き _________
そう思い続けて良かった。
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!