あれから約2ヶ月が経った。
あの日以降、
私は毎日黒尾さんと連絡を取るようになった。
たまに写真を撮りに行ったりする時も
ギャラリーじゃなくて
下で撮っていいよと言われ
最近はみんなの近くで撮るようになった。
猫又先生もいいよと言ってくれた。
3年生が卒業し
黒尾先輩の足も治り
いつも通りの"音駒"になってきた。
(ああ、これが…)
黒尾先輩が引っ張っている
そのチームは私の中で日本一だった。
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ある日、体育館に行くと
見覚えのある人がいた。
黒尾先輩と話しているのは
琳華さんだった。
研磨くんは私が
黒尾先輩のことを好きだということを知っている。
黒尾先輩が琳華さんに未練タラタラなのも
琳華さんと何があったのかも知っている。
私は研磨くんと体育館に入った。
すると琳華さんが私に気づき歩いてきた
覚えててくれたんだ。
こんな何も特徴のない私を
あぁ、これくらいになると
これくらい黒尾先輩との距離が近くなると
呼び捨てもできちゃうんだな
そう言って彼女はギャラリーに行った。
研磨くんはとても心配していた。
私はそのことを知らなかった。
そういえば、中1の時に彼女ができたと聞いた。
でもそれ以降は全くその話をしてくれなくて
私は衛輔くんのこと、自分が思っているより
何も分かっていなかった。何も知らなかった。
彼らは昔から仲が良く
琳華さんも中学までは
バレーボールをしていたそうだ。
高校は別になったけど
帰り道も同じだし
たまに家に行って遊んでたらしい。
黒尾先輩と琳華さんは
黒尾先輩が中2の頃から付き合っていた。
でも去年の春高で
琳華さんと別れたらしい。
それを機に琳華さんは
関西の大学に行くことにしたそうだ。
そして黒尾先輩はいまも琳華さんのことを
忘れられずにいるそうだ。
黒尾先輩が琳華さんの元へ駆けつけた日
琳華さんにとって黒尾先輩は大切な人なんだ。
あの二人の間に私が入る隙なんてなかった。
黒尾先輩はさっきの会話を聞いてても
少しだけ嫌そうにしていたな、と思い出した。
黒尾先輩は吹っ切れているはずなのに
琳華さんは未だに黒尾先輩に執着している気がした。
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練習が終わり、黒尾先輩と琳華さんは
ギャラリーに行った。
盗み聞きは良くないって分かってたけど
どうしても気になった。
私は誰もいなくなった体育館に残った。
2人に見えないところで。
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黒尾先輩はなんて言うんだろうか。
琳華さんに自分の思いを
ちゃんと言えるのだろうか。
彼はなぜか謝った、そして
そう言った。
編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。