緑のハチマキを首からただぶらんと下げて、適当にわっかを作っていたオスマン。私は逆に、気合を入れて頭の上できゅっとリボン結びをしていた。
リレーは、各クラスから女子二名、男子二名を選出する。こう見えて彼女は割とスポーツができる方だ。
昔から足も速かったし、球技もなんだかんだそつなくこなす。ただ、身体が堅いとかなんとか言ってたっけ。
スポーツをする上で柔軟ができないのは結構致命傷だと思う。だから、スポーツ万能なのではなく、文化部の割にはスポーツができる方という表現をあえてしている。
私は彼女とは違って、運動音痴ではないが足がそこまで速くない。
だから、こうして借り物競争に立候補をしたまでだ。玉入れもいいけど、一発逆転が出来そうな借り物競争にした。
この話を聞いて正直安心した。例年、そういったお題を入れていたようだが、ついに生徒からクレームが来て今年から廃止になったそうだ。
当時同じクラスだったゾムが、私を呼びに来た。黄色のネクタイのように首から結んだゾムに駆け寄り、一緒にスタート地点へと向かった。
私の友人がゾムと二人三脚をしたがっていた。彼は案外モテる。女子に優しいわけではないが、なんでもそつなくこなせる彼が魅力的に感じるそうだ。
二人三脚は男子と女子が走るもの。ここでカップルが誕生したるすることも過去にはあったらしいが、ゾムはそういったことに興味が無さそう。
長い前髪を黒いゴムでちゃちゃっと結べば、緑色の瞳のおでましだ。オスマンの深い緑とは違って、彩度のある黄緑。そして、整った目鼻立ちが、お目見えした。
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。