一列ずつ黒板の前に立ち、それぞれの役割が描かれている下に名前を書いていく。圧倒的に男子はキッチンに回っていた。確かに無理だよなー…私が男だったら、女装したいだなんて思わない。次は私の列の番だ。男装もいいけど、どちらかというと裏方に回りたい。オスマンはどうするんだろう?なんとなくオスマンもキッチンにしそうな気がする。絶対に抽選になるだろうけど、私はキッチンに名前を書いた。それからオスマンの列になり、彼女もキッチンへ名前を書く。
キッチンの欄に名前を書いた人のみ、紙が配られる。そこに名前を書き、男子と女子に分けられた。
それぞれの名前が書かれた紙は袋に入れられ、その中から委員長が何枚か紙を引く。紙に書かれた名前を最後に読み上げると、教室からは落胆の声や笑い声が聞こえてきた。名前が呼ばれる度に一喜一憂する男子達は見ていて飽きない。
女装する男子の名前が呼ばれた後は、男装する女子の名前だ。女子の名前が書かれた紙を数枚引き、委員長が読み上げる。
あーあ、オスマンは接客側に回ってしまった。
チャットアプリにそう流すと
と返ってきた。確かに、休憩は重なりやすいかもしれない。
目鼻立ちが綺麗だから、可愛いよりも格好いいかもしれない。
彼女から返事が来る前に送ると、
と返ってきた。ホームルームは終了し、私もオスマンも部活へと向かった。
*side os*
俺には幼馴染がいた。まだ幼い時、隣に越してきたのがあなただった。挨拶にやってきた時、彼女は俺に言った。
「おにんぎょうさんみたい」
最悪な言葉だ。反吐が出る。目をくりくりとさせながら、俺にそう言った彼女に本当は言葉を返してやりたかった。
あなたの方がお人形さんみたいやな。
って。
リビングに降りると、母さんが朝食の準備をしていた。制服を着て髪を整え、椅子に座って待つ。階段を下りる音がする。母さんは急いで手を洗い、エプロンをしまって席に着いた。
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!