そんなことを言いながら教師用玄関から中に入り、まず事務室へと向かった。
高校の名前を言って、自分の名前を名乗るあなた。このポスターを貼ってほしいんですけど、誰に言えばいいですか?あなたが尋ねると、事務室のおばちゃんは生徒会長を呼んでくれた。
茶髪に染めた髪は、根本が黒くなっている。俺はそれだけで、目の前の男を身だしなみばかり気にする、中身のない男だと捉えた。
簡単に了承してくれた。事務室から出ると、生徒数名が俺達を見てこそこそと話しをしていた。
くそみたいな会話だ。横にいるあなたの顔を見れば、気にしている素振りはなかった。聞こえていないのか、聞こえていてあえてそういう態度を取っているのか。
でも、俺は見逃さなかった。いつもピンと背筋を伸ばしている彼女が、猫背になったことを。
太陽よりも眩しいあなたの笑顔。あなたの言う通りやな、バチなんて当たりそうもないわ。
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図書室で赤本を探していると、声をかけてきたのはあなたの友人のゾム。俺はキョロキョロとあなたを探したが、「いや、お前に用があんねん」と小さな声で呟く。
赤本のコーナーから少し離れた参考書のコーナーにあなたはいた。そっちを指さしたが、ゾムは「せやから、お前に用があんの」と先程よりも少しだけ大きな声で言う。
手招きされ廊下に出て、階段の踊り場へやってきた。
ゾムは「すまんすまん」と笑って謝る。なんやねん。さっさとせえや。こっちはあなた置いてきとんねん。
嫌な予感がした。キョロキョロと落ち着きのない目、恥ずかしさからか首に手をやる仕草。
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!