ゾムと一緒にやってきたのはゾムの隣のクラス。同じ部活の男の子に声をかけ「椅子余っとる?」と尋ねれば、二脚程借りることができた。
私が一つ、そしてゾムが一つ。一緒に私のクラスまで運んでくれた。
教室の前に着くと、見計らったかのようにオスマンが扉から廊下へ出てきた。
彼女はゾムから椅子を受け取る。
ポケットから取り出したのは、昼休みに食べようと思っていた苺味のキャンディ。
いつかの体育祭のように前髪を雑に撫で、ゾムは自分の教室に帰っていった。
噂好きのクラスの女子。
乱れた前髪を直すために、トイレにやってきた。
そして何故かオスマンも一緒に。
どうやら私の嘘は秒で見破られてしまったようだ。
前髪はしっかり七と三で分けられており、頭のてっぺんには天使の輪っかができている。細い髪はつるつると指通りも良さそうだし、完璧なストレートかと思えば下の方は少しだけ癖がある。
私の知る限り、彼女の髪型はほぼほぼ変わらない。色も長さも、昔から同じような気さえする。
何かを言いかけたオスマン。
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!