先生がここまで気を使うのは、俺の家が地主だからだ。権力を持った家には逆らえないということ。こっちこそ申し訳ない気持ちでいっぱいだ。きっと父さんが学校に圧力をかけて、俺が女装でいることに無理やり同意を得たんだろう。
浮かんだ顔は一人。
幼馴染に迷惑はかけたくない。
しかし俺の気持ちは届かず、どうやらその情報は先生にいってたらしい。
先生は納得し、俺は解放された。
***
筋肉ついてる俺の脚見たら、あなたは何て言うんかな。筋張った筋肉は隠せない。
スポーツテストは校庭や体育館を生徒達がぐるぐると回って、それぞれの種目を受ける形式になっている。先程はボール投げをしてきて、一応手は抜いたがそれでも男子の運動音痴くらいの距離は飛んだ。
「肩には自信があるんだよね」
と得意気な顔をしたあなたは、そこまで飛ばなかった。
肩をぐるぐると回しながら、彼女はぶつぶつと言う。その言い方がなんだかおっさん臭くて、思わず吹き出してしまった。
軽くストレッチをしながらあゆが訪ねる。
俺が男やからやで。
たった一言、この言葉が言えたらどれだけ楽なんだろう。
*side あなた*
学園祭まで数か月を切った。その間にやるべきは、色々な手配。
例えば私達のクラスなら、調理器具を調達したり、椅子やテーブルを確保したり。
その他にも男装、女装するための衣装やテーブルクロス…まあ、色んなものがあるのだ。
私はテーブルや椅子を調達する係に任命された。
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!