前の話
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これは、とある世界のお話。
ーー大正、そう呼ばれる時代に、一人の少女が目覚めた。
彼女は生を受けた時から12歳で、親は存在しなかった。
なのに、なぜか名前はわかる。
その名はーー「夜咲 桜」。
そして、なにより不思議なのは、「目的があり」、「知識がある」ということ。
生まれも親もわからない、その彼女に残された、ヒトが持ち揃える知識。
だが、その知識でもわからなかったこと。それは、目覚めた場所の目の前で燃え盛る森について。
なんでかはわからない。なぜか、その燃え盛る森を見ていると涙が溢れるのだ。
一滴、二滴...そう涙が零れ始めると、雨がぽつぽつと降り始めた。
その雨は、徐々に彼女を染めていく。
そして、彼女が全てを理解できないのに苦しみ、嘆いた瞬間。
ーーその命に「魔」が宿った。
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そして彼女は魔女になったーー
...だけならまだ良かった。
鬼、それは命を食し、日を苦手とするもの。
そのほとんどは、衝動を抑えきれず人を襲う。
そして、その鬼に襲われた人間の傷口に鬼の血が入ると、その人間も鬼となってしまう。
また、その一部の鬼には、十二鬼月という者がいる。
十二鬼月は、「鬼舞辻 無惨」という鬼の配下にある鬼で、強い。
...ここまでなら彼女にわかっていたし、知識も入っていた。
しかし、彼女の疑問は、「自分が鬼になってしまう」ということ。
なにかの条件が合うと、鬼と化してしまうのだ。
しかも、普通の鬼とは違い、日を苦手とせず、理性もギリギリ残されるため、人を襲い始めてしまうと、どれだけブレーキをかけようとしても押さえきれなくなってしまうのだ。
...今まではギリギリ襲わずにすんだが...
そんな悩みを抱え、彼女は今日もヒトから逃げる。
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。