~六年前の夏~
ドン!!!!
目の前にいる人間に、俺の目が見開いた。
透き通るような肌に、大きな緑の瞳。
短くきった茶色の髪がとても似合う。
俺は小さくうなずいた。
浦田渉か...二年にはおらんな。一年やろか...
なんだろう...この気持ち...。
恋...した時と同じ気持ちだな...
それから俺たちは交流を続け、友達以上の関係になっていた。
もう付き合ってるといっても過言ではないが、やはり面と向かって告白しようと思い、俺は渉に夏祭りへいこうと誘ったんだ。
普通に歩いてるけど、なんか普通に恥ずかしい。でも、渉に気づかれたくないから、平然を装って前を向く。
と、俺の後ろに組んでいた手に、なにかが触れた。
渉の指だった。当の渉を見ると、そっぽ向いてても分かるくらい顔が真っ赤。
俺は彼の手をギュッと握り、グッと引っ張った。
勢いで彼の顔が近くにくる。
そんなこんなしながら指輪を買って、渉の指にはめてあげた。
プルルルルル
さぁてなにするかな~。俺も帰ろ...
トコトコトコトコ...
渉や。...まだ帰ってなかったんか。
誰?誰?知らない。誰誰誰。
誰なのそいつは。なか良さそうに。カッコいい白髪の男。
誰?知らない。誰なの?そいつは君の何なの?
そいつに会うために俺との約束を切り上げたの?
え?どうすればいい?
ウラギリモノヲドウスレバイイ?
アイツは一人だ。今ならまだやれる。
コツ...コツ...コツ...
もっと...もっと早く...
コツコツコツコツ
あと少し。もっと...
コツコツコツコツ
俺は渉の後ろに立ち、渉の口を、ハンカチで押さえた。
バタバタと暴れる腕を片手で掴み、気絶するまで口を押さえ続けた。
おれの腕のなかに倒れこむ彼を抱きかかえ、夜の道を歩いた。
セミの音がうるさい、蒸し暑い夜の一瞬の出来事。
裏切ったこいつが悪いんだ。この...
この...
ピーンポーン
坂田side
とんでもないことを押し付けられたな...
狂喜染みた彼を恐れて受け入れたが、どうしたものか...
あ、起きた。
名前...なんだっけ。あ、渉くんか。
彼の大きな瞳と目があう。
そのとたん、俺のなかになにかが走った。
なんだ...この...胸の高鳴りは...
駄目だ。ヤりたい。俺はおかしいんだ。人を見ると、二人きりの空間にいると...どうしても...
気づくと、俺は彼を押し倒していた。
彼の薄紅の唇に俺の唇を重ねた。
最初は抵抗してた彼も、だんだん抵抗力がなくなってきた。
俺は彼をキツく抱いた。彼が俺に従うようになるまで。彼の精神が崩壊するまで。
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。