一夜明けて私はある事の為に早めに出社した。
用事を済ませデスクに座ると恭平が出社して来た。
恭平
ち、ちひろ。
お、おはよう。
昨日はその・・・
ちひろ
おはよう。
土屋くん。
今日は早いのね。
恭平
え?土屋くん?
あ、ああ、なんか寝れなくて早く来たらちひろに会える気がして。
ちひろ
そう。
私はちょっと用があったから。
恭平
あのさ、昨夜の事なんだけど、ごめんちひろ。
俺、今までどうかしてたんだ。
だから。
ちひろ
だから、何?
恭平
だから、だから、もう一度俺達。
ちひろ
無理。
恭平
え?
ちひろ
だから無理。
恭平
お、俺はちひろが好きなんだ。
ちひろ
ありがとう。
私も土屋くんの事好き。
恭平
なら、どうして。
ちひろ
私達、今のままじゃ昨夜みたいに喧嘩すると思うの。
だからもう終にしましょう。
恭平
ちひろどうしても無理なのか?
ちひろ
ごめんね。
もう無理なの。
恭平
そっか。
ごめんなちひろ。
恭平は項垂れる様に自分のデスクに着いた。
その話を聞いていたのか出社して来た緑子さんが突然話しかけてきた。
緑子
ちひろちゃん、私の所為だよね。
私があんな酷いこと言ったから。
私、私、なんてお詫びしたら良いか。
本当にごめんなさい。
ちひろ
ううん。
私の方こそ酷いこと言ってごめんなさい。
あの時は心に余裕が無くてつい緑子さんに当たってしまったの本当にごめんなさい。
恭平の事は緑子さんの所為じゃないから気にしないで。
緑子
うんん、元はと言えば私が恭平を唆したのだから恭平は悪くないし、2人は別れることないよ。
ちひろ
ううん。
遅かれ早かれ私達はきっとこうなる運命だったんだと思う。
だから2人とも自分を責めるのはやめましょ。
ちひろ
あ、土屋くんお弁当。
私達、もう付き合ってないから今日で最後。
お昼も別々に食べましょ。
食べ終わったら弁当箱は机の上に置いといて。
あ、別に捨てても構わないわよ。
もう、二度と作ることないから。
恭平
ちひろ・・・。
ごめん。
ありがとう。
私達は片言の業務連絡以外の言葉を話さずに黙々と仕事をしていた。
課長
(久しぶりに登場と思ったら何なのこの重苦し空気は)
(本当に毎回何か起こるよね)
(でも、それも今日までか)
課長
よし、仕事頑張るぞ〜。
ちひろ
黙って仕事しろ。
緑子
普段仕事してないでしょ。
恭平
変な仕事ばかり押し付けやがって、死ねば良いのに。
課長
(なんか当たりが何時もより厳しい気が・・・。)
(それも今日までだ。)
あ、そうだ。
仕事終に神代くんから話があるそうだ。
こうして、1日の仕事が終わった。
課長
では神代さん挨拶を。
ちひろ
はい。
えっと、皆さんは知ってると思うけど、私の婚約者が他界して、傷心した私はこの村から出直すつもでした。
正直、この村に帰ってきた所で何が変わるのだろうか、と少し不安でした。
そんな時に恭平に出会いました、恭平は変わらず優しくて、その優しさに引っ張られる様な感じで何となく毎日が過ぎていきました。
その後、緑子さんと出会い何となくこの仕事を初めました。
ちひろ
この職場での生活はとても楽しかったです。
確かに辛い日も会ったけど私にとっては夢のような日々で優しい世界でした。
このままずっと続くものだと思っていました。
でも昨日、緑子さんと喧嘩して、恭平とも喧嘩してやっと目が覚めたんです。
私、自分で何も決めてないことに。
恭平と付き合う事になった時もそう、何となく自然な流れで付き合う様になり、流されるまま毎日が過ぎていきました。
ちひろ
このままじゃ駄目なんじゃないか?
このまま2人の優しさに流されるままで居たら又、私達はきっと傷つけ合ってしまう。
そう思ったんです。
だから私は、今日限りでこの仕事を辞めたいと思います。
今度は自分で決めて自分の足で歩んで行きたいと思います。
まだ具体的に決めてないけど今までありがとうございました。
恭平
まだ決めてないんだったら、決まるまで此処に居ればいいじゃん。
ちひろ
ありがとう。
でもそれじゃ駄目なんです。
きっと私は2人に甘えてしまう。
今度は抜け出せなくなる。
それにここは私の歩む道じゃないんだと思えたから。
緑子
そっか。
もう、決めてしまったのね。
これから寂しくなるわね。
ちひろ
緑子さん。
ありがとう。
今まで、本当に・・・あり・・がとう・・ございました。
私は泣くだろうなと思っていたけど。
やっぱり泣きました。
緑子さんと暫く抱き合ってお互いに泣きました。
恭平はデスクに座ったまま俯いていた。
課長も珍しく泣いていました。
こうして私の夢のような日々は終わり。
明日から新たな1歩を踏み出すと心に決めた。
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