私は恭平が漕ぎ出そうとしている自転車の後ろを掴んだ。
すると恭平の体がつんのめりになり倒れそうになった。
私は当たり前ように恭平の自転車の後ろに座った。
そう言い、恭平は自転車を漕ぎ出した。
私は自転車に揺られながら再び満天な星空を見上げた。
ゆっくりと流れる星空と山の合間に見える大きな月が幻想的で素敵だった。
この自転車を漕いでいるこの人は土屋恭平と言い私の幼馴染みで、私の初恋の人である。
いつから一緒に居るのだろう?
と、考えてみても、んん?
である。
物心つく前から一緒に居て。
当たり前のように隣に居て。
当たり前のように一緒に過ごして。
当たり前のようにこの人と結婚する物だと思ってた。
優柔不断で臆病で頼り無いけど、とにかく優しい。
私は辛いあ事があるとよく恭平に八つ当たりをしていた。
それでも恭平は笑顔で話を聞いてくれる。
そんな恭平が好きでした。
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!