スタートの合図で私は精一杯演技した。
彼女は私だ。
彼女も変わろうと足掻いている。
でもどうしたら変わるのか分からない。
だから彼女はずっと悩んでる、苦しんでる。
変わらなきゃ私も・・・。
一向にカットの声が掛からず、私は周りのスタッフさん達を見た。
皆、目を大きく見開いて固まっている。
う〜ん、何処か変だったのかな?
そう言うや否や未華子さんは私に抱き着いてきた。
こうして4日間の撮影はあっという間に終わった。
私は自分の部屋のベッドに仰向けで寝転がり撮影した日々のことを思い出していた。
私にとって何もかもが初めての体験で失敗ばかりだったけどスタッフの方々はとても親切で撮影は楽しかった。
撮影が終わってもまだ胸の高鳴りが治まらない。
私、まだ続けていたい。
私は未華子と別れ際に貰った名刺を眺めた。
編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。