テオくんには絶対言いたくなかった。
だって親に虐待されてる子となんか付き合いたくないだろう。
僕だったら絶対に怖くて駄目だ。
テオくんを見ると、とても驚いた顔をしていた。
そりゃそうだ、虐待なんて身近であまり聞かないだろう。
テオくんはやけに歯切れが悪い。
あー、もう完全にテオくんには嫌われちゃったんだろうな。
もう最悪だ。僕がこんな家に生まれなければ…
もっと明るい性格だったら…
もうテオくんとはサヨナラだ。
僕が顔を伏せると…
テオくんは僕を思い切り抱きしめてきた。
テオくんはこんな僕に優しく語りかけてくれる。
一生懸命「君を守る。」って言ってくれる。
こんな僕のために、こんな…
テオくんの優しい声が耳元に響く。
あぁ、駄目だ。
君はやっぱり僕の…
✌🐎🐇✌🐎🐇✌
君は泣き止むまで頭を撫で続けてくれた。
いつの間にかじんたんは泣き疲れて寝てしまったようだ。
泣きすぎて涙でまつ毛がビショビショだ。
俺はじんたんのおでこにキスを落とす。
現在の時刻、18:43
そろそろ帰らなくてはいけない。
もうちょっと寝顔を見ていたかったが仕方がない。
じんたんを揺すって起こした。
じんたんは瞬時に俺から離れた。
そんな瞬発力あったのね…
そう言って2人で玄関のドアを開けた瞬間
じんたんのお母さんが帰ってきた。
見た目は普通の仕事を頑張っているお母さんだ。
こんな人がじんたんに虐待するなんて…人間は見た目に寄らないものだ。
俺はじんたんとお母さんに会釈をして
走って家に向かった。
走っている途中、玄関の方に振り向くと
じんたんのお母さんは
とても冷たい目をこちらに向けていた。
✌🐎🐇✌🐎🐇✌
次の日。
じんたんは学校に来ていなかった。
なんだか胸騒ぎがする。
今じんたんが危ない気がする。
俺を呼んでいる気がする。
二時間目の国語の授業の途中、じんたんが心配で、全く内容が入ってこない。
その時、何だか頭の中にじんたんの声が聞こえた気がした。
俺はハッとして勢いで立ち上がってしまった。
俺は教室から飛び出した。
じんたんが呼んでる。
俺の本能がそう感じている。
じんたんは今絶対泣いている。傷ついている。
守らなくちゃ、俺の世界1大事な人を。
俺はじんたんの家まで全速力で走った。
✌🐎🐇✌🐎🐇✌
意識がボーッとする。
さっきから何回殴られたっけ。
母さんはどこに行った?
あれ、というかなんで殴られてたんだっけ。
あー、死ぬのかな
意識が朦朧とし始めた。
もうダメだ。
確か母さんに夜中から殴られてたんだっけな。
そりゃ意識も朦朧とするよね…。
最後に1発瓶みたいなので殴られた。
こんな言葉付き。
それから母さんがどこへ行ったのかは知らない。
そんな言葉届くはずが無い。
テオくんと出逢った夕日が眩しかった夏の校舎裏。
テオくんがくれた冷たく冷えたラムネ。
テオくんと一緒に見たイチョウの木。
どれもこれもが僕にとっては忘れられない1分、1秒の大切な思い出。
僕より5cmくらい小さな身長。
だけどその背中は誰よりも大きく見えた。
僕のヒーロー。そして僕の…好きな人。
さようなら。
テオくん。
大好きだったよ。
……To be continued
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。