そう言って去っていったみや。
俺はしばらくの間そこから動くことが出来なかった。
俺はじんたんが好き。
だけど、みやもじんたんが好き。
もし、みやのチームが優勝したら…
もしかしたら、じんたんはみやの事が好きかもしれない。
そのまま2人は両想いになって…
そしたら俺は、
あの二人を笑顔で応援出来るかな?
✌🐎🐇✌🐎🐇✌
俺は体育館倉庫へ駆け出した。
もう学校は体育祭の準備で熱気に包まれている。
本番並の盛り上がりだ。
体育館倉庫へ入り、赤いペンキの替えを2、3個持って教室へ戻ろうと階段を登った時だった。
踏み外してグラッと体が大きく揺れる。
このままだとまずい。下へ落下し更にはペンキが全て零れてしまう。
でもどうすることも出来なくて、そのまま重力に流されるように落下…
グッと腕を引かれ、体が落下直前でピタッと止まる。
腕の先を見ると、そこにはみやがいた。
みやはゆっくりと元の体勢に戻してくれた。
おかげでペンキをぶちまける事にはならなくて済んだ。
そう言いながら俺の両手にあったペンキをひょいっと持つとそのまま歩き出す。
みやって、こういう小さい所に気が利くところがカッコイイ。
それに俺を軽々支えられる程の力もあるし…
今度の体育祭でリレーなんか走ったら絶対全校の女子達が黙っていないだろう。
俺が笑いながらそう告げると、みやは急に黙ってしまった。
俺は不思議に思ってみやの顔色を除く。
空き教室を指してみやはこっちこっちと手招きをしてくる。
俺はみやにつられるように空き教室に入った。
みやが何故そんなことを話してくるのかわからない。
どうしたの?みや?
みやは真剣な目で俺を見つめてくる。
その深い黒色の瞳に吸い込まれそうになった。
みやは俺の耳元に口を近づけてこう呟いた。
✌🐎🐇✌🐎🐇✌
じんたん、どこにいるんだろう?
俺はじんたんを探すために学校を回った。
どこにもいない。
準備は夜の19:00頃まで皆が残るからいるはずなんだけど…
じんたんは、いつも弁当を食べている屋上への階段に座っていた。
俺はじんたんに駆け寄った。
じんたんは俺を見るとパァっと顔を輝かせていつもの愛しい声で
「テオくんっ」と呼んでくれた。
そう言ったじんたんの目には明らかに動揺の色が浮かんでいた。
✌🐎🐇✌🐎🐇✌
みやは何を言っているんだろう。
テオくんを見るな…って?
それはどういう感情なの?
俺の頭の中は軽くパニック。
だって普段みやはこんな事言わないから。
それに伝えたいこと…って?
そのままって…いやわかんねぇよ?!
俺の頭には【うさぎ】と【?】がくるくる回っている。
みやが何かを呟いた瞬間、ドンッと鈍い音がして、俺の背後にはいつの間にか壁があった。
そして…みやと距離も吐息が分かるくらい近くなっていた。
いや何でそんなに落ち着いていられんの!?
俺は力の限りみやを押し返そうとするが、みやに両手首を掴まれてしまっているからそれも出来ない。
みやは唇が触れそうなくらい近くでこう囁いた。
わかんないわかんない。
なんで?みやが俺のこと好き?
しかも恋愛感情で?
急に頬に熱が集まっていく。
ありえないじゃん。そんなのおかしいって。
でも、気づいてしまった。
自分だっておかしいって事に。
みやは俺を解放して、そのまま行ってしまった。
俺はへなへなとそこに座り込む。
心臓がバクバク言っている。
顔が熱い。
でも、自分だって…
自分だって…
おかしいんだ。
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みや、あいつ本気なのか。
しかもそれ条件違うやんか。まぁいいとけどね
じんたんは俺の方を向いて、困ったような笑顔を作った。
「じんたん、顔赤いよ?」
その言葉は声にならずに喉の奥で泡のようにシュワシュワと消えてしまった。
抱き締めたい。その小さな背中を。
でも、今抱きしめたら…もっと混乱してしまう。
ダメだ…ダメなんだ。
じんたんのそんな顔を見ちゃったら…俺に勝ち目なんてない。
じんたんの頭を1回ポンと撫でてあげた。
俺はじんたんにそう言って、
そこから逃げるように階段を降りていった。
俺の選んだ答えは…
じんたんを応援すること。
……To be continued
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編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!