俺たちの学校は中二から宿泊体験学習が入る。
んでもって、俺は当たり前のようにじんちゃんと班を組んだわけ。
宿泊の2日目、班でグループ行動(街探索)をしている時だった。
俺はじんたんが行ったトイレへ向かった。
だけど、そこにじんたんの姿は無い。
その時、壁の方になにか反射して光っているものが見えた。
近づいて確認してみると、それはじんたんが持っていた大好きなアニメのストラップだった。
俺の頭には前にじんたんが言っていた事が蘇る。
「違う中学校」
今日は殆どの中学生が宿泊に来ているはず。
つまり隣の中学校も今日なわけで…
俺は嫌な予感がした。
冷たい汗が背中をつー…と流れる。
そんなわけない。だって…もう中学校も違うし、こんな広い場所で遭遇する可能性なんて希にしかない。
でも、もし…その希にしかない可能性に当たっていたら…?
ごめん、皆…本当にごめん。
俺の1番大切な人を守らなくちゃだから。
どこにいるかもわからない。
何をされているのかも知らない。
けど、行かなきゃ。
じんちゃんを取り戻さなきゃ。
俺はそんな思いで一心不乱に走っていた。
かなりの時間走っていたと思う。
俺の体力もそろそろ使い果たしそうになったその時だった。
俺のいる道路を跨いで反対側にある路地裏。
誰も使わなそうな、暗くてじめっとしている場所。
俺は目が良いからよく凝らして見てみた。
数秒見てると奥の方が微かに見える。
そこまで長くない路地裏っぽい。
奥の方に四、五人の男達。
その真ん中で横たわっているのが…じんちゃんだった。
俺は急いで反対側に渡り、静かに路地裏に入っていった。
まずは腹に1発フットサルで鍛えたキックをかます。
拳が飛んでくる。でもそんな弱すぎるパンチは俺に当たらない。
うまい具合に交わして顎を蹴り上げてやる。
蹴りが俺に飛んでくる。
微かに顔に当たる。
でもそんなん擦り傷だ。
そのまま拳で顔面ドーン。
3人ともぶっ倒れた。
でも、まだ意識はあるみたいだ。
俺が凄んだら一気に逃げやがった。
弱い奴らだ。
俺はハッとしてじんちゃんに駆け寄る。
じんちゃんは目を閉じたまま。
息は?…すごく弱い。
どうしよう。じんちゃんが…
一向に目を開けないじんちゃん。
後頭部から血が出ている。
体もボロボロだ。
俺は必死にじんちゃんに声をかける。
でも返事は帰ってこなかった。
俺はじんちゃんを担いで、路地裏から出た。
そこに先生たちが丁度いて、すぐに救急車を呼んでもらった。
待っている間、俺は1度だけじんちゃんが微かに意識が戻ったんだ。
その時、一言だけ…こう言ったんだ。
その後救急車が来て、じんたんは運ばれた。
俺は他校のやつと喧嘩したことと、勝手に行動したことで、こっぴどく叱られた。
まぁ、そりゃしょうがないけどね。
でも…最後にじんたんが言った、『テオくん』って誰のことだったんだろうか?
俺にはわからなかった。
宿泊が終わった数日後、じんちゃんを病院へお見舞いに行くと、
じんちゃんの親戚の叔母さんからこう告げられた。
✌🐎🐇✌🐎🐇✌
かなりガツンときた。
だって、俺と過ごした思い出全部…消えちゃったんでしょ?
辛いよ。
だって、じんたんは俺の好きな人だよ?
中学校行っても変わらなかったこの思い。
全部…全部…無駄だったのか?
俺もじんたんが苦しんでいるのは見たくない。
俺は笑顔でみやに言う。
みやも笑っている。
でも、俺の笑顔は作り笑い。
だって、こんなに溢れそうになる気持ちをどこに閉じ込めればいいの?
もうわからないよ。わからないよ…
じんたん、俺との記憶を無くしても、俺はずっと覚えてるからね?
君と過ごしたあの夏のことを。
そして、俺の初恋も。
……To be continued
編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。