第12話

忘れた理由。
1,006
2018/04/11 14:10
俺たちの学校は中二から宿泊体験学習が入る。
んでもって、俺は当たり前のようにじんちゃんと班を組んだわけ。
宿泊の2日目、班でグループ行動(街探索)をしている時だった。
みや
あれ、じんちゃん遅くない?
クラスメイト1
確かに、トイレいったきり戻ってこないね
クラスメイト2
みやかわ、見に行ってやんなよ
みや
うん。行ってくるわー
俺はじんたんが行ったトイレへ向かった。
だけど、そこにじんたんの姿は無い。
みや
…じんちゃん?おーい、いないのー?
その時、壁の方になにか反射して光っているものが見えた。

近づいて確認してみると、それはじんたんが持っていた大好きなアニメのストラップだった。
みや
…は?なん、でこれ落ちてんの?
俺の頭には前にじんたんが言っていた事が蘇る。
じん
俺ね、小学校の時いじめられてたの。
でもテッ…、すごい強い男の子が助けてくれたの!
だから、その子には感謝しきれない。
みや
へぇー、そいつ良い奴だね
じん
でしょ!?俺より小さいのにすっごい強いの!
みや
てかじんちゃんいじめるとか…許せん
じん
大丈夫だよ!
いじめてた奴らは隣の中学校に行ったし…
「違う中学校」
今日は殆どの中学生が宿泊に来ているはず。
つまり隣の中学校も今日なわけで…
みや
まさか、…ね
俺は嫌な予感がした。
冷たい汗が背中をつー…と流れる。
そんなわけない。だって…もう中学校も違うし、こんな広い場所で遭遇する可能性なんて希にしかない。

でも、もし…その希にしかない可能性に当たっていたら…?
みや
…じんちゃん!
クラスメイト2
あ、みや!
どう?いた?
みや
悪い!ちょっと探してくるから先行ってて!!!
クラスメイト1
は!?お前何言って…っておい!待てよ!!
ごめん、皆…本当にごめん。

俺の1番大切な人を守らなくちゃだから。
どこにいるかもわからない。
何をされているのかも知らない。

けど、行かなきゃ。

じんちゃんを取り戻さなきゃ。

俺はそんな思いで一心不乱に走っていた。
みや
はぁっ…はぁっ…
じんちゃんどこだよ…クソっ、広すぎんだよ!!
かなりの時間走っていたと思う。
俺の体力もそろそろ使い果たしそうになったその時だった。
みや
俺のいる道路を跨いで反対側にある路地裏。
誰も使わなそうな、暗くてじめっとしている場所。

俺は目が良いからよく凝らして見てみた。
数秒見てると奥の方が微かに見える。
そこまで長くない路地裏っぽい。
みや
…あ
奥の方に四、五人の男達。
その真ん中で横たわっているのが…じんちゃんだった。
みや
…フルボッコにしてやる
俺は急いで反対側に渡り、静かに路地裏に入っていった。
B
こいつ、もうへばってんぞw
C
6年の時より体力無くなってんじゃねーかww
まぁ、あの時は寺島がいたから耐性が薄れてんだろーな。
ざまぁねぇなぁ、寺島もいなくなって、守ってくれるやつもいなくなって…w
C
こいつどうする?
いいよ、そのまま置いとこうぜ。
どうせ誰も助けになんか来ないし、ここがわかるわけねーよ
C
そうだなwじゃあな、じんくん。
また今度も殴らせて…
みや
てめぇら助けに来ないと思ってんじゃねーぞ
B
は?誰だよっ…ゴフッ…
まずは腹に1発フットサルで鍛えたキックをかます。
C
あ?てめぇこいつの連れか。
ナメてんじゃねーぞ!?
拳が飛んでくる。でもそんな弱すぎるパンチは俺に当たらない。
うまい具合に交わして顎を蹴り上げてやる。
C
グハッ…
てめぇ…ふざけんなよ。
調子のってんじゃねーよ!
みや
ふざけてんのはどっちの方だよ
蹴りが俺に飛んでくる。

微かに顔に当たる。
でもそんなん擦り傷だ。

そのまま拳で顔面ドーン。
3人ともぶっ倒れた。
でも、まだ意識はあるみたいだ。
B
なめやがって…
C
チッ…くそ…っ
みや
俺は容赦なく上から踵を落とす。
B
ぐふっ…
みや
早く散れよクソ野郎共が
お、おい!行くぞ!こんなやつもうほっとけ!
B
て、てめぇ!覚えてろよ!
俺が凄んだら一気に逃げやがった。
弱い奴らだ。

俺はハッとしてじんちゃんに駆け寄る。
みや
じんちゃん…じんちゃん!
大丈夫?起きて?聞こえる?
じんちゃんは目を閉じたまま。
息は?…すごく弱い。

どうしよう。じんちゃんが…
一向に目を開けないじんちゃん。

後頭部から血が出ている。
体もボロボロだ。
みや
ねぇ…じんちゃん!起きろよ!じんちゃん!!
まって、まだいかないでよね…?それは無いよね?
俺は必死にじんちゃんに声をかける。
でも返事は帰ってこなかった。
みや
じんちゃん…?!
救急車…呼ばないと。こっから出よう
俺はじんちゃんを担いで、路地裏から出た。
そこに先生たちが丁度いて、すぐに救急車を呼んでもらった。

待っている間、俺は1度だけじんちゃんが微かに意識が戻ったんだ。
その時、一言だけ…こう言ったんだ。
じん
ん…
みや
じんちゃん…?
じん
テ、オくん…
みや
…え?
その後救急車が来て、じんたんは運ばれた。
俺は他校のやつと喧嘩したことと、勝手に行動したことで、こっぴどく叱られた。
まぁ、そりゃしょうがないけどね。
でも…最後にじんたんが言った、『テオくん』って誰のことだったんだろうか?
俺にはわからなかった。
宿泊が終わった数日後、じんちゃんを病院へお見舞いに行くと、
じんちゃんの親戚の叔母さんからこう告げられた。
叔母さん
宮川くん、あなたはじんと仲が1番いいから言っておくわ…
じんはね…っ中学校から、前の記憶が…
みや
………嘘だろ
✌🐎🐇✌🐎🐇✌
みや
「中学校より前の記憶が全て消えた」って言われた
テオ
みや
つまり、一部的な記憶喪失みたいなんだ
頭を思い切り殴られたみたいで。生活に支障は出なかったけど、後遺症として記憶が飛んでった、そんな感じ
テオ
まじ、か…
かなりガツンときた。
だって、俺と過ごした思い出全部…消えちゃったんでしょ?
辛いよ。
だって、じんたんは俺の好きな人だよ?
中学校行っても変わらなかったこの思い。
全部…全部…無駄だったのか?
みや
で、てっちゃん
テオ
なに?
みや
何か、きっかけがあれば…もしかしたら昔の記憶が戻るかもしれないんだ。
…でも
テオ
でも?
みや
無理に思い出そうとすると…じんちゃんさ、頭痛くなっちゃうんだ。
だから…だから
みや
辛い思いはさせたくない、から…
じんちゃんの前で昔の事を言うのは…控えてほしい。
頼む、じんちゃんが苦しんでるのは見たくないんだ…
テオ
…わかっ、た。
約束する
俺もじんたんが苦しんでいるのは見たくない。
テオ
つまり、もう1度友達をやり直せばいいんだろ?
俺は笑顔でみやに言う。
みや
…ん、そゆこと!
みやも笑っている。
でも、俺の笑顔は作り笑い。

だって、こんなに溢れそうになる気持ちをどこに閉じ込めればいいの?
もうわからないよ。わからないよ…
じんたん、俺との記憶を無くしても、俺はずっと覚えてるからね?
君と過ごしたあの夏のことを。
そして、俺の初恋も。
……To be continued

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