あ〜あとため息を漏らしながら急に姿を現したのは黒髪の男性やった。
そいつが顔を上げると、少年のままで止まったかのような童顔で大きい前歯を見せて笑っとった。
俺の言葉を聞いて、へへへへと笑い声を上げるショウ。
ショウは言うた後に俺を睨み、ナイフを見せつけてきよった。
やっぱり童顔やからか、全然怖ない俺は普通に否定する。
早口なのにふわふわな口調で高い声で言うたショウは頬を膨らませた。
俺が淡々と言うたら、ショウは目が笑わんまま口角を釣り上げる。
ショウがまた消えると、ゴトンゴトンと重い物が外れた音が聞こえ、ジャラジャラと鎖が動く音と共に俺の身体が降ろされていく。
いつの間にか上半身はキリストの磔のままなのに浮いとった足が地面に着き、斜めの長座位の姿勢になった。
戻ってきたショウはんふふと子どもなら愛らしい笑みを浮かべて俺を見つめてきよる。
こいつら……というか、目の前におるショウともう1人のリュウのことはなんでも知っとる。
リュウは移植医でショウは血液外科の看護師やし、リュウは心臓を移植されたレシピエントでショウは輸血が欠かせない血友病の患者やって過去も知っとるからな。
覚悟は出来とるかという意味を込めて、俺はショウの瞳に刺さるように睨みつけた。
ショウは面白い漫才を見たかのように腹を抱えて笑い始める。
編集部コメント
引きこもりのおじさんと真面目な女子高生という組み合わせがユニーク。コンテストテーマである「タイムカプセル」が、世代の違う二人をつなぎ、物語を進めるアイテムとして存在感を発揮しています。<br />登場人物が自分の過去と向き合い、未来に向かって成長していく過程が丁寧な構成で描かれていました。