気に入った場所は徹夜しながらいくつか見つけた。そして、
あの部屋に向かった。
普通に怖いシンプルに怖い。もしドアを開けたらあいつが首を絞めにきたらどうしよ、なんて自分をビビらせならがエレベーターを乗る。
誰かがいるだけでびっくりして、 脈が速くなる。
そして気づいたら、その人は自分のドアの前に寄りかかっている。
指先まで心臓の鼓動を強く感じる。
肩を指で押される。こんなんでビビっちゃだめ。
その手を力強く掴んだ。
どいつもこいつも気が狂ってやがる。
てか美沙いつからここにいたの?
想像しただけで鳥肌が立つ。
彼女はもう一つの手を上げて、私の胸を狙う。
その手に持っている物を見てしまった瞬間体は動かなくなって
私はそのまま目を瞑った。
今回こそ、死ぬんだ。
目を開けたら、その手は掴まれていて、
美沙は動けなくなっていた。
エイジは私の手を引っ張り、私は彼の後ろに立たされた。
あぁ、携帯だったんだ。
あぁ、疲れた
思いっきり襟を片手で掴んだ。
こんな事初めてやった。
階段の降りる音が聞こえなくなった瞬間、私はエイジの手を離した。
なんだよ、怖いくせに。
美沙が階段を降りている間私は、
エイジに気付かれないように、彼の服の裾を掴んでいた。
申し訳なくて、有り難くて、安心で、
元に戻りたくて、抱きしめたくて、顔が見たくて。
込み上がる熱意を、私は全て胸の奥へ、一番奥まで、閉まった。
まだダメ。
最低だね。 私
顔を隠すようにエイジは下を向き、横に目をそらす。
頬にうつろな笑いをもらし、顎が震えていた。
そして、振り向いて、背中が小さく見えてきて、ボヤけてきて、
私は溜息をつき慌てて上をみる。
何謝ってるの。
君に謝れると
私が本当にクズに見えるから
マジでやめて。
編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。