結局、ご飯中
エイジとは
一言も話せなかった
そらっていつも、真っ直ぐ人の目を見るよね。
私と違って、
大事なタイミングでいつも目を逸らす私と、違って。
そらこそ、真っ赤な顔で私を見つめながら、
ゆっくり微笑んでさ。
と、肩に手を置き、頭を寄せてくる。
あまりの近さに、変な緊張が走る。
エイジは急にそらの肩を後ろへ引っ張り、
彼の手を下ろした。
変な空気が流れて、
エイジの低い声と目つきは
どこか怒っているような気がした。
精一杯の笑顔を、エイジに向けた。
それを見たエイジは、少し驚いたようだった。
彼は頭を下げて、
すぐにまた顔を上げた。
私を見て、優しく微笑んだ。
みんなが背中を向けて歩いて行った途端に、
私は抑えきれず、涙をこぼす。
重い涙はそのまま止まらず、
数分間、流れ続けた。
今考えれば、
人生を彼らと沢山歩んできた。
思い返せば、全て素敵な時間だった。
これからも沢山、そんな時間作りたいから
二ヶ月後、
また、会う頃。
その時に、
返事を聞きに行くから。
エイジ。
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!