アバンティーズが撮影している時は、
大体、エイジの部屋で、ゲームやら本やらで暇つぶしをしている。
今日は、エイジが買ったばっかの本を勝手に読み進める。
多動力の話で、久しぶりに曲を作りたくなった。
携帯もパソコンも家に置いてきたけど。
そして楽しそうな声を壁越しから聞くのも、日課。
いつもより騒がしいリビング。
酒でも飲んでんのかな。面白そう。
体を後ろに傾け、ベットに寝転び、昼寝をする。
撮影が終わる頃に起きる。そしてドアを見つめ、
撮影終了を知らせてくれるのを待つ。
今日はそらがドアを開けた。
真っ赤な顔を弄ると、バランスを崩した彼は私に近づき
肩に体重をすべてかけられて、
私は
再び ベッドに倒れこむ。
両手を掴み、
そらは唇を押し付ける。
喋ろうとした口に 舌が差し入れられて、
甘いワインの味がする。
抵抗しようとお腹を蹴ると、あいてーと言いながら
私の上から横に倒れる。
慌てて起き上がる。
そしていびきをかく。
手首でキスを拭き、エイジの部屋から出て行く。
罪悪感を感じながら、あることに気づいてしまった。
アバンティーズにとって、
キスは ただのキス って。
そこには感情なんかなかった。
だから、
エイジにとって、
私はただの
ただの…
セフレなんだな。
足の力が抜けて、床に座り込む。
なんだ。
私だけか。
なんだ。 はは
編集部コメント
主人公は鈍感で口下手ではあるものの『コミュ障』というほどではないので、キャラの作り込みに関しては一考の余地があるものの、楽曲テーマ、オーディオドラマ前提、登場人物の数などの制約が多いコンテストにおいて、条件内できちんと可愛らしくまとまっているお話でした!<br />転校生、幼馴染、親友といった王道ポジションのキャラたちがストーリーの中でそれぞれの役割を果たし、ハッピーな読後感に仕上がっています。