俺は、輝。
大学に通っている。生まれた瞬間からなぜか首に切られたような傷があったらしい。その理由は医者にも分からないみたいだ。俺は別に気にしてないからどうでもいいんだけど。
ある日の帰り道。
女の人が立っていた。
「ねえ、私のこと覚えてる?」
「ごめんなさい。あったことありませんよね?」
声をかけられた瞬間首の傷が疼いた。
本能が言っている。
この人には近づいちゃいけないって。
だめだ。速く逃げなゃ。なのに、足が...足が...。
「やっぱり覚えてないの...?」
女の人は悲しそうに言った。
何も僕にはわからない。
いきなり強い頭痛が襲った。
「なら、思い出させてあげる。」
女の人は静かに言ったような気がした。
頭痛が酷くてあまりよく聞こえなかった。
次に起きた時には、自分の家のベッドの上だった。
俺はすべてを思い出した。
最悪だ。
あの人はこの世でもいつまでも俺を追いかけてくることが分かってしまったから...
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!