翌朝。
周りを見渡しても南君がいなくて
どこに行ったのかと思ったら
キッチンで母のお弁当作りを
なんかすごい頷きながら見ていた。
何が目的なのかさっぱり分からない。
で、私の存在に気づいて
そう言われたから
おはよう
と返した。
で返ってきたのはもちろん
母のおはよう。
気にしない。
延々と話しかけてくる南君をスルーして五分。
朝ご飯の用意ができたので
とりあえず自分の部屋に。
さすがに10人は無理かな〜とか思いながら食パンを食べる。
…。
横からものすごい視線を感じたので
一旦食べるのをやめて
そこまで体動かさないし。
夜食べればいいし。
満足そうな顔をして笑った。
なんなんだこの人は。
って。一緒にいて楽しい自分がいるのにおかしくなった。
そして、1時半。
公園に来るまでにいろんなハプニングがあった。
なにせ隣にいる人は死んでるんで。
高峰君にどんな顔されるのか
私が南君をスルーするみたいに
スルーされないか
ものすごく不安だった。
待つこと7分。
案外早めに高峰くんは登場した。
確かに南君が言ってた通り
身長高くて、顔立ちも良くて
肌白くて、まっすぐな目。
見とれてる場合じゃない。
話しかけなきゃ。
私が歩き出した時
南君が小さな声で
歩
って言ったのを私は聞き逃さなかった。
突然知らない人に話しかけられて
もちろん動揺する彼。
とりあえず私がどういう理由で話しかけたのか説明してしないと。
焦る私に南君は
いつもの陽気な声じゃなくて
優しい声で
落ち着け だの、大丈夫か だの
いろんな言葉をかけてくれた。
南君
って単語を言った瞬間に
目を見開いてさらに動揺した。
また、さっきと同じトーンで高峰君の名前を呼ぶ。
南君が高峰君への思いを
話し始めた。
続けようと思ったけど
高峰君がそれを止めた。
そりゃそうだよね。
でも、
構わず、続けた。
いつのまにか私まで涙を。
言い終わって
泣きすぎて
もうこれ以上話せなくなった。
すると、高峰君が
途中から、私の方を向かなくなってしまっていた。
泣いてるかな、とか思ったけど
そうではなさそう。
そうして、南君が最後に言った言葉を
届ける
私はそう言って
歩き出した。
用は済んだ。
帰ろう、って、
最後の言葉を言ってから
高峰君の顔つきが変わった。
言葉はきついけど
どこか、
優しさが溢れる
そんな人にだった。
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!