───それが、私の出した答え。
先輩の告白は、本当にすごく嬉しかった。
だけど、どんなに考えないようにしようって思っても……頭の中を埋め尽くす森田には、勝てなかった。
私の言葉に、先輩は一瞬、酷く悲しそうな顔をして、だけど、すぐにいつもみたいに柔らかくて優しい笑顔をくれた。
考えてみれば、いつも私が誰かを好きになるばっかりで、私のことを好きだって言ってくれたのは伊藤先輩が初めてだから。
───ありがとう、伊藤先輩。
【帰路】
先輩と別れて、1人。
家までの帰り道がやけに遠く感じる。
あぁ、前はあんなに簡単に次の恋が出来たのに、本当にどうしちゃったんだろう。
このまま森田を好きでいるのは苦しいだけなのに、分かっていてもやめられない。はぁ、昔の自分が少し羨ましいよ……。
歩きながら、先輩とのことを報告しようと思い立った私は、ちかちゃんに電話をかけた。
数コールのあと、いつも通りすぎるちかちゃんの声に安心して、少し泣きたくなった。
私の言葉を聞いたちかちゃんは、ホッと小さく息を吐いたような気がした。
少しの沈黙の後で、
"疲れるし、最悪"なんて言いながらも、その声はどこか嬉しそうで。
ちかちゃんの言う、"どっかの誰かさん"を思うと思わず顔がにやけてしまう。
後ろから聞こえるみのっちの小さな声。
……なーんだ、今も一緒にいるんじゃん。
電話なんてかけて邪魔しちゃったな。
今までみたいに簡単に好きになって、失恋しても涙も出ないような簡単に次に進める恋じゃなくて。
……森田と過ごすうちに少しずつ惹かれて、振られてからも忘れられなくて、悩んで泣いた本気の恋。
小さく笑うちかちゃんに、"また明日"と告げて電話を切った。
ちかちゃんのおかげで、私はやっぱり森田じゃなきゃダメなんだって再確認できた。
こうなったら……とことん森田を好きな私でいよう。
編集部コメント
依頼人の悩みや不安に向き合うカウンセラーという立場の主人公が見せる慈愛にも似た優しい共感と、その裏にひそむほの暗い闇。いわゆる正義ではないものの、譲れない己の信念のために動く彼の姿は一本筋が通っていて、抗いがたい魅力がありました!